第25回
飾り山 東京に進出

■福岡に夏を連れて来る祭り・博多 園山笠の華は、市内を華麗に彩る飾り山。歌舞伎の名場面、古戦記、人気のアニメなどを再現した「博多の夏絵巻」だ。
 1955(昭和30)年、新天町飾り山の題材は「新平家物語」。原作は吉川英治が50年から7年にわたって週刊誌に連載した小説で、大映が映画化した。人形師高尾八十二(やそじ)が杉本健吉画伯の挿絵を参考に製作。御輿(みこし)を担いで暴れる比叡山の僧兵たちに、平清盛が矢を射掛ける勇壮な場面を生き生きと表現した。
 この飾り山にほれ込んだのが大映社長・永田雅一氏。「最高の芸術品だ。ぜひ東京で公開して、アメリカにも持って行きたい」と大感激。映画の宣伝を兼ねて、ニューヨーク・ロックフェラー記念館に飾るという壮大な構想を打ち出した。
 8月11日、博多祇園山笠振興会の協力を得て、櫛田神社での壮行会の後に、トラック4台を挟みオープンカー20台で市中をパレード。初めて福岡を出る飾り山をにぎやかに送り出した。
 公開会場は東京・銀座の松屋デパート。8月18日〜30日、5階まで吹き抜けのロビーに飾られ、訪れる人々の目を楽しませた。19日には福岡出身の自由党総裁・緒方竹虎氏も姿を見せ「懐かしい。子どものころを思い出すよ」とニッコリ。
 結局、アメリカ行きは実現しなかったが、永田社長を魅了した新天町の飾り山がきっかけとなり、博多 園山笠を県外の人へアピールする絶好の機会が生まれたのだった。

 

   
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